国是を考える
前回は世界の国是について述べました。
では日本の最新の国是とは何でしょうか。
私が思うに、それは「五箇条の御誓文」です。
日本史の中で聞いたことがあるかもしれません。
五箇条の御誓文とは明治元年(1868)3月14日、明治天皇が京都御所で神々を祭り、公卿諸侯などとともに、この神々に対して誓いを立て、明治新政府の基本方針を示したものです。
「五箇條の御誓文」意訳(口語文)
一、 広く人材を集めて会議を開き議論を行い、大切なことはすべて公正な意見によって決めましょう。
一、 身分の上下を問わず、心を一つにして積極的に国を治め整えましょう。
一、 文官や武官はいうまでもなく一般の国民も、それぞれ自分の職責を果たし、
各自の志すところを達成できるように、人々に希望を失わせないことが肝要です。
一、 これまでの悪い習慣をすてて、何ごとも普遍的な道理に基づいて行いましょう。
一、 知識を世界に求めて天皇を中心とするうるわしい国柄や伝統を大切にして、
大いに国を発展させましょう。
これより、わが国は未だかつてない大変革を行おうとするにあたり、私はみずから天地の神々や祖先に誓い、重大な決意のもとに国政に関するこの基本方針を定め、国民の生活を安定させる大道を確立しようとしているところです。
皆さんもこの趣旨に基づいて心を合わせて努力して下さい。
なぜ明治政府は五箇条の御誓文を発布する必要があったのでしょうか?
それは、江戸時代が終わり封建国家から近代法治国家へ発展する時に、国と国民の進むべき道を示すためです。
面白いことに、上記の五箇条は当時の日本では実現していないものばかりなのです。
1)広く人材を集めて議論できていない
2)身分の上下はある(士農工商)
3)各自の志を達成できない(身分制、藩制度)
4)悪い慣習がのこっている(裸体での往来、男女混浴、帯刀、ちょんまげ、切腹など)
5)鎖国していた
当時の日本には実現できていないものだからこそ、あえて五箇条の御誓文という形で示す価値があったとも言えます。
明治時代はこの国是(五箇条の御誓文)に基づいて着々と進められてきています。
1868年(明治元年)3月14日 五箇条の御誓文
1871年(明治4年) 8月29日 廃藩置県
1876年(明治9年) 3月28日 廃刀令
1889年(明治22年) 2月11日 大日本帝国憲法発布
1890年(明治23年)11月25日 第1回帝国議会
大日本帝国憲法は五箇条の御誓文が発布されてから22年後に発布されています。
つまり、五箇条の御誓文の「広く人材を集めて会議を開き議論」を行うために憲法をつくったのです。
そしてどんな憲法にするかも五箇条の御誓文が基礎となります。
現代も明治時代と同様に大変革が起きています。
有史以来初めて日本の人口が減少しているのです(戦時を除く)。
その意味で現代は明治維新以上の大改革期と言えます。
その大変革期に私たちが掲げるべき国是とは何か?
それを真剣に考える。
それが個人や会社のビジョンとなるのです。